不倫相手が相手の既婚を本当に知らず、知らなかったことに落ち度もない場合、配偶者から慰謝料を請求されても、原則として認められにくいと考えられます。一方で、既婚者から独身だとだまされていた不倫相手は、相手に対して慰謝料を請求できる可能性があります。
ただし、「知らなかった」と言うだけで責任がなくなるわけではありません。相手の説明や交際中の状況から既婚だと分かった、または少し確認すれば分かったと判断される場合は、請求の可否が変わります。
誰が慰謝料を請求するかで結論が変わる
この問題では、「不倫相手が慰謝料を請求される場合」と「不倫相手が慰謝料を請求する場合」を分けて考える必要があります。
| 立場 | 相手 | 一般的な判断 |
|---|---|---|
| 既婚者と交際した人 | 既婚者の配偶者から請求される | 既婚だと知らず、知らなかったことにも落ち度がなければ、原則として請求は認められにくい |
| 既婚者と交際した人 | 既婚者本人に請求する | 独身だとだまされたなどの事情があれば、慰謝料を請求できる可能性がある |
| 既婚者の配偶者 | 不倫相手に請求する | 不倫相手が既婚だと知っていた、または知らなかったことに過失がある場合に問題となる |
したがって、「既婚者だと知らなかった不倫相手が慰謝料を請求できるか」という質問は、誰から誰に請求するのかを確認しないと結論を出せません。
既婚だと知らずに交際した人が、配偶者から請求された場合
相手が既婚者だと知らず、通常の注意をしても知ることができなかった場合は、配偶者に対する不法行為責任が否定される可能性が高くなります。
不倫相手に慰謝料を請求するには、一般に次のような事情が問題になります。
- 相手が既婚者であることを知っていたか
- 知らなかったとしても、少し確認すれば分かった状況ではなかったか
- 相手との関係が、夫婦の婚姻生活を侵害するものだったか
- 故意または過失があったか
ここでいう「過失」とは、知らなかったことに落ち度がある状態です。たとえば、相手が結婚指輪をしていた、共通の知人から既婚者だと聞いていた、家庭の話を繰り返ししていたなどの事情があると、知らなかったという主張が認められにくくなることがあります。
知らなかったことが認められやすい事情
次のような事情は、既婚だと知らなかったことを示す材料になり得ます。ただし、これだけで必ず責任が否定されるわけではありません。
- 相手が独身だと明確に説明していた
- 独身であることを示すメッセージやプロフィールが残っている
- 相手の自宅や生活状況から、既婚だと判断できなかった
- 交際期間中、相手の家族や配偶者の存在を知る機会がなかった
- 既婚だと知った後は、すぐに交際や連絡をやめた
反対に、相手が家庭の都合で頻繁に会えない、休日に連絡が取れない、結婚指輪をしている、既婚者であることを示すSNS投稿があるといった事情を知りながら交際を続けた場合は、過失があったと判断される可能性があります。
既婚者にだまされた不倫相手は慰謝料を請求できるか
既婚者から「独身」「離婚する予定」「結婚していない」などと説明され、それを信じて交際していた場合は、だまされた側から既婚者本人に慰謝料を請求できる可能性があります。
もっとも、交際したという事実だけで慰謝料が必ず認められるわけではありません。相手がどのような説明をしたのか、その説明を信じたことに無理がなかったか、交際期間や精神的な負担がどの程度だったかなどを総合的に判断します。
請求を検討しやすい事情
- 相手が独身だと明確にうそをついていた
- 結婚の約束をしていた
- 相手の説明を裏付けるような行動やメッセージがあった
- 既婚であることを隠すため、家族や生活についてうその説明をしていた
- 既婚だと知った後も、謝罪や説明をせず交際を続けようとした
一方で、相手が既婚者であることを知っていた、または不自然な点を認識しながら確認しなかった場合は、請求が認められにくくなることがあります。
慰謝料を請求されたときに最初に確認すること
請求書や連絡が届いた場合は、すぐに支払いや責任を認める返事をせず、まず「いつ、どのような経緯で既婚だと知ったのか」を整理してください。
- 相手が独身だと説明したメッセージやメールを保存する
- 相手のプロフィール、SNS、会話の記録を削除せず保管する
- 交際開始時期と、既婚だと知った時期を時系列で整理する
- 配偶者から届いた請求書、内容証明郵便、メッセージを保存する
- 慰謝料の金額、支払期限、請求理由を確認する
- 事実と異なる内容が含まれている場合は、書面で認めない
特に、既婚だと知った後も交際を続けたかどうかは重要です。知った後の行動によって、知る前の交際と、その後の交際が分けて評価されることがあります。
「知らなかった」が認められるかは証拠で判断される
実際の争いでは、本人の記憶だけでなく、相手がどのように既婚であることを隠していたかを示す証拠が重要です。
| 証拠の例 | 確認できる内容 |
|---|---|
| メッセージやメール | 独身だという説明、結婚や離婚に関する発言 |
| SNSやプロフィール | 独身と受け取れる表示、家族関係に関する投稿 |
| 交際中の説明や会話の記録 | 既婚であることを隠していた経緯 |
| 知人とのやり取り | 相手が周囲にも独身と説明していた事情 |
| 請求書や内容証明郵便 | 請求者の主張、金額、期限 |
相手の配偶者から連絡が来ても、相手を責めるために配偶者へ個人情報を広げたり、SNSで事情を公表したりすると、別のトラブルにつながるおそれがあります。連絡内容を保存し、必要に応じて弁護士などに相談して対応を決めてください。
結論:知らなかっただけでなく、知らなかったことに落ち度がないかが重要
既婚者だと知らず、知らなかったことにも落ち度がなければ、配偶者から不倫慰謝料を請求されても、原則として認められにくいと考えられます。
反対に、既婚だと知っていた、または既婚と気づける事情があった場合は、慰謝料を請求される可能性があります。既婚者から独身だとだまされていた場合は、メッセージなどの証拠を保存し、既婚者本人への慰謝料請求を検討できます。
まずは、独身だと説明された内容、既婚だと知った時期、知った後の対応を時系列で整理することが重要です。







