不倫相手との子どもを認知してもらう場合、父親が自分の意思で認知するなら、通常は「証拠をそろえて裁判をする」必要はありません。一方、相手が認知を拒否しているなら、家庭裁判所で認知を求める手続きが必要になり、親子関係を示す証拠が重要になります。
特に有力な証拠はDNA鑑定です。ただし、母親が婚姻中に妊娠・出産した場合は、夫を父親と推定する法律上のルールが関係することがあるため、認知の前に別の手続きが必要になる場合があります。
父親が認知に同意するなら、裁判上の証拠は原則として不要
認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもについて、男性が法律上の父親であると認めることです。父親が認知届を提出する任意認知であれば、母親が不倫関係や親子関係を証明するために、裁判で証拠を提出する必要はありません。
ただし、認知届を提出すれば、男性と子どもの法律上の親子関係が生じます。口約束だけでは認知が成立したことにならないため、実際に認知届が受理されたかを確認することが大切です。
認知に関する民法上の規定は、e-Gov法令検索「民法」で確認できます。
認知を拒否された場合は、証拠を集めて認知の訴えを検討する
父親が認知届を提出しない場合、子どもまたは母親は、家庭裁判所で認知を求める手続きを検討できます。調停で相手と話し合い、それでも合意できなければ、認知の訴えによって裁判所の判断を求める流れが一般的です。
この場合、裁判所が親子関係を判断するための資料が必要です。裁判所が認知を認めるかどうかは、提出された証拠全体から判断されるため、不倫の事実だけで当然に認知が認められるわけではありません。
認知を求めるときに考えられる証拠
- 父親と子どものDNA鑑定の結果
- 妊娠・出産の時期が分かる母子健康手帳や診療記録
- 妊娠を父親に伝えたメッセージやメール
- 交際期間や性交渉の時期が分かるメッセージ、写真、手帳など
- 父親が子どもを自分の子どもだと認めていた発言や書面
- 出産費用や生活費の支払い記録
- 父親との交際や妊娠の経緯を知る人の証言
これらは単独で決定的な証拠になるとは限りません。たとえば、交際していたことが分かっても、妊娠した時期にほかの男性との性交渉がなかったか、父親が子どもとの親子関係を認めていたかなど、複数の事情を合わせて判断されます。
DNA鑑定は有力だが、相手の同意が必要とは限らない
DNA鑑定は、父親と子どもの生物学的な親子関係を確認する方法として、認知の判断で重要な資料になり得ます。父親が任意に鑑定へ協力すれば、鑑定結果を話し合いや調停で利用できます。
しかし、相手がDNA鑑定を拒否したからといって、母親が無断で相手の髪の毛や食器などを集めて鑑定することは、方法や入手経緯によって別の問題が生じるおそれがあります。鑑定を行う場合は、適切な手続きや鑑定機関について、弁護士や家庭裁判所に確認してください。
裁判手続きでは、鑑定への協力を求めることが問題になる場合があります。ただし、相手を必ず強制的に採血できる、拒否すれば必ず認知が認められる、と一律に決まっているわけではありません。鑑定を拒否した事情も含め、ほかの証拠と合わせて判断されます。
母親が結婚している場合は、認知の前に父親の推定が問題になる
子どもが生まれたとき、母親が婚姻中だった場合や、離婚後の一定期間内に生まれた場合は、民法上、夫を父親と推定する規定が適用されることがあります。
この場合、生物学上の父親が別の男性であっても、すぐにその男性の認知届を提出できるとは限りません。戸籍上・法律上の父親を変更するために、嫡出否認など別の手続きが必要になる可能性があります。
誰が法律上の父親と推定されるかは、婚姻・離婚の日、子どもの出生時期、再婚の有無などによって変わります。DNA鑑定の結果だけで手続きの問題が解決するとは限らないため、母親が婚姻中の場合は、認知届を出す前に家庭裁判所または家族関係に詳しい弁護士へ確認してください。
認知を求める前に保存しておきたい情報
相手が連絡を絶つ可能性がある場合は、次の情報を削除せず保存しておくと、後の手続きで役立つ可能性があります。
- メッセージやメールを、相手の名前・アカウント名・日時が分かる状態で保存する。
- 妊娠を伝えた日時、相手の返信、認知や養育費に関する発言を保存する。
- 交際期間や会った日、性交渉があった時期を時系列で整理する。
- 妊娠・出産に関する診療記録、母子健康手帳、領収書を保管する。
- 電話で話した内容は、日時と発言内容をメモし、関連するメッセージと一緒に管理する。
スクリーンショットだけでなく、元のメッセージが確認できる端末やメールも残しておくと、内容や送信者を説明しやすくなります。証拠を加工したり、相手の端末やアカウントに無断でアクセスしたりすることは避けてください。
認知が成立すると、養育費や相続にも関係する
認知によって法律上の父子関係が成立すると、子どもは父親に対して養育費を求められる可能性があります。また、父親が亡くなった場合の相続関係にも影響します。
ただし、認知をしても、父親が自動的に子どもと同居したり、親権者になったりするわけではありません。養育費の金額や支払方法、親権・面会交流などは、それぞれ別に決める必要があります。
不倫相手に認知してもらうための判断ポイント
相手が認知に同意しているなら、認知届の提出状況を確認することが先です。相手が拒否しているなら、DNA鑑定だけでなく、交際・妊娠時期・相手の認識が分かる資料を整理し、認知調停や認知の訴えを検討します。
母親が婚姻中、または離婚・再婚の時期が関係する場合は、認知の可否だけでなく、法律上の父親を変更する手続きが必要になることがあります。まずは子どもの出生時期と母親の婚姻状況を整理し、証拠を保管したうえで、家庭裁判所または弁護士に具体的な手続きを確認してください。







